春の二度目の自転車旅の記録。

1.概要
2.行動記録
2.1 飛鳥駅(荷物預)
2.2 宮滝
2.3 吉野1:一般観光ゾーン(昼)
2.4 吉野2:西行庵(夕)
2.5 吉野3:花矢倉展望台(夜)
2.6 飛鳥駅(荷物受取)



# 1.概要 【4月13日(木)】


今年の春は天気が難しかったが、13日、14日は快晴が予報されていた。そして今回の旅のメインイベントである「吉野の桜」鑑賞をこの日にぶつけた。桜予報では上千本あたりの満開が16日と予報されていた(と記憶している)ので、いい感じの桜を見れると思い、このような予定とした。

合わせて万葉の旧跡である宮滝も訪れた。


# 2.行動記録(抄)



<ルート>



- 2.1 飛鳥駅(荷物預)


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10:30頃。飛鳥駅にて荷物をコインロッカーに預ける。前日のうちにコインロッカーの大きさ、料金、引取可能時刻などを確認しておいたので迷うことなく作業終了。

最低限の衣類(雨具含む)、パンク等に備えた修理工具、カメラ、三脚一式のみを持つこととした。バッグが片側になるだけで随分と軽くなる。


- 2.2 宮滝



◆宮滝

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国道169を走りちょっとした峠を越え、吉野川沿いを東に走る。「宮滝」という場所に行きたかったのだ。とりあえず宮滝郵便局を見つけた。木のポストが可愛らしい。私はポスト好き。


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それっぽい案内があったので自転車を進ませると、「史跡 宮滝遺跡」なるものがあった。


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万葉歌碑あり。裏面にも文字が刻まれていたが、周囲にいろんなものがあって読めるような位置に立つことはできなかった。

正面の碑刻は流麗なかな文字。日差しの向きが悪く影が出ないので写真では見えづらいと思う。拓を取りたくなるような歌碑だ。

吉野の宮にいでましし時柿本朝臣人麻呂の作れる歌

やすみしし/わが大君の/きこしめす/天の下に/國はしも/さはにあれども/山川の/きよき河内と/み心を/吉野の國の/花ちらふ/秋津の野邊に/宮柱/ふとしきませば/ももしきの/大宮人は/舟なめて/朝川わたり/舟ぎほひ/夕川わたる/この川の/絶ゆることなく/この山の/いや高しらす/水はしる/たぎの都は/見れどあかぬかも

反歌

見れどあかぬ吉野の川の常滑のたゆることなくまたかえり見む

(巻1-36)

写真から文字をおこしたので、誤りがあるかもしれない。

長歌の形式で書かれている。内容はおべっかに近い。宮廷歌人の人麻呂も組織の中で生きた人なのだ。反歌の”常滑”は「永遠、いつまでも」というくらいの意。すばらしい吉野川をいつまでもなんどもみていたいというくらいの意味だろう。


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近くに同じ内容の歌碑があった。こちらに解説が書かれていた。



◆吉野川(宮滝付近)

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吉野川を望遠レンズで撮影。入江泰吉氏が宮滝の写真を撮っている。素晴らしい写真だ。あのような写真は私には撮れなかった。


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ただの写真にしかならない。写真は難しい。


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撮影ポイントを探しながら吉野川に掛かる橋を渡ろうと自転車を手押ししていたら悲しいものを見つけてしまった。

おう・・・この橋から川に飛び込んだ人がいたのね。橋の横には高いフェンスが設置され、上部にはトゲトゲまで付いている。”絶対にやらせないぞ、やらせはせん、やらせはせん、やらせはせん”という気概を感じる。

そういえば、3月の旅の時に、”犬養万葉記念館”に立ち寄った時に、スタッフの方が「昔は宮滝に飛び込んで遊んでいたんだけどねぇ。今は事故があったりして危ないから・・・」なんて話をしていたのを思い出した。

「宮滝に飛び込む」とは、この橋から飛び込むことを言っていたのか?


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正気の沙汰ではない。凄い高度だし、水もそんなに深くはない。度胸試しなのか?


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この高さで飛び込むのか・・・?


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うーーん。高い所が苦手な私には絶対に無理だ。臆病者と罵られてもいい。


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ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず


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さて、宮滝、吉野川を楽しんだ。吉野の山に向かうこととしよう。(13:40)



- 2.3 吉野1:一般観光ゾーン(昼)


吉野の山は桜で有名だが、下千本、中千本、上千本、奥千本と4つのゾーンに分けられている。この日は下千本は満開、中千本は満開間近、上千本が4/16満開予定、奥千本が蕾・・・くらいの情報だったと思う。

ということで、吉野の山に続く道は観光客、観光バスで渋滞。分かってはいたものの、やはり人混みの場所は好きではない。

今回は斜度の低いルートでのぼってみたが、それほどツライとは感じなかった。クライマーな人には物足りないかも。



◆いわゆる吉野の桜

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で、桜が一望できるような場所に大型駐車場があり、バスなどが駐車してある。ここから先は歩行者天国ゾーン。観光案内所で桜の状況と歩行者天国ゾーンの区間を確認させてもらって、今時期の見どころを教えてもらった。

お寺さんの方角を撮影。


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横位置でも撮影。


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広角で。吉野は思ったよりも桜が少なく杉が多い。


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ちゃんと自転車で来たという証拠に撮影。天気はバッチリだった。


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吉野はだいたい撮影ポイントが決まっている。そういうところには人が集まっていて、きっとみんな同じような構図で撮影しているだろう。あまり楽しい撮影ではない。自由度が低すぎる。


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はい。これが撮影ポイントからの絵。


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歩行者天国ゾーンは手押しなら自転車が入っていいとのことだったので手押ししたが、他人にぶつけないように気を配りながら歩くのはしんどかった。この写真の状態は随分ましな方。両側にお土産屋さんなどがあり、あちらこちらに動く人が多くて本当に大変。混雑する朝の駅のような感じだ。そこを自転車が突っ込んでいくのだから迷惑だったに違いない・・・。すみません。

途中、中国人のおばちゃんにあちらの言葉で話しかけられた。身振り手振りからすると「この山を自転車でのぼってきたの?すごいね!!」みたいな感じだった。

そして、私と同じように自転車で来られた方と話をすることができた。大阪から来られた方だったが、「ならクル」という奈良の自転車ルートマップを頂いた。その方は最近、奈良を走ることが趣味だということで、この「ならクル」をもとにいろんな所を走っているとのことだった。ありがとうございました。

・ならクル
http://nara-cycling.com/map/narakuru/

観光資源の多い奈良だからできることなのかもしれないけど、宮城もこういうものがあればいいのにな。自転車屋さんが集まって、サイクルルートの策定とかできないのかな・・・(もうやっているかもしれないけど)。


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- 2.4 吉野2:西行庵(夕)



◆奥千本、西行庵

人の多いゾーンでの撮影に辟易し、歩行者天国ゾーンを過ぎて奥千本の方へ駆け上がった。私が使ったルートは桜がほとんど無く杉林の道。それ故、人はほとんどいない。時々、勘違いしたクルマがスピードを出して走ってくるので少し危ないが、それ以外は概ね静かで気持ちよく走れた。

途中、下りてくる外国人家族がいて、ちょっとした挨拶を交わした。このルートを下りていくとはなかなか渋い。知性を感じる。


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17:10 奥千本の入り口というか、金峯神社の入り口に到着。もう夕方だ。


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吉野の山奥には「西行庵」という西行が住んだといわれる庵がある。吉野の桜を愛した西行は桜の歌をたくさん残している。吉野の桜と西行はセットで楽しまなければならない。

・ねがはくは花のもとにて春死なむその如月の望月のころ


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遠くの山が幾重にも重なる。遠くの山ほどぼんやりと薄く遠近感がでている。


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馬酔木の花に夕日が当たる。


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西行庵までのルート。実際に歩いてみると、結構たいへん。遅くなってもいいようにヘッドライトはバッグに入れておいた。


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道わけ石。説明では右側のルートへ進むが、本当は左に行ったほうが早いことは一周してから分かった。


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結構あぶない道を歩く。将来的には手すりなどが必要だな。子供にはちょっと危ないかもしれない。


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17:34 西行庵に到着。


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こんな感じ。奥千本の桜はまだ蕾とのことだが、この周辺に桜らしき木はあまり無い。

あとでアマチュアカメラマンの方と話をすることがあったが、奥千本は嘘で奥三本が正しいらしい。

まあ、私にとっては西行さんに縁のある史跡に来られただけで無上の喜びだ。


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粗末な庵に誰かいた。名前は聞かなかったが西行さんだろう。


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庵の裏手から。掃き掃除をするための箒が後ろにしまってあった。


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木の根が見事だった。

と、写真を撮っていたら騒がしい夫婦が来られた。女性は中国の方のようでかなり朗らかな感じ。

「桜があると思ってきたのに、騙されたよ~(カタコトの日本語)」と言っている。なかなか憎めない人だ。

静かな西行庵がひととき賑やかになった。


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奥千本の地は杉を伐採して桜を植えているようだ。ゆくゆくは本当に桜を千本にして、ここまで観光客を呼び込もうとしているのだろう。

先程のご夫婦が歩いているのが見える。「すごい道だよ~(カタコトの日本語)」


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・とくとくと落つも岩間の苔清水 汲みほすまでもなきすみかかな

見事な歌だ。

西行さんは自分の住処とその周りにある自然物とを対比させた歌を幾つか作っている。無常の我が身を悲しむというか慈しんでいたのだろう。


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では、帰ろう。こんな感じの道を歩いてのぼる。


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先を歩くご夫婦の後塵を拝し、荒れた道を歩く。ふと見ると木の板が落ちていた。

・吉野山の桜の一本としてのちの世も咲きつづけますように

この感性好き。


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・家族は永遠に一緒 母ちゃんのおいしいご飯を 皆が待ってる 父ちゃんも

涙腺崩壊。

きっと桜のオーナー制度のようなものと思われる。こういったメッセージを自分の桜の木に取り付けられるのだろう。木板だからいつかは朽ちるだろうけど、その思いは朽ちることはない。


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遠くの山々。あそこを縦走できるようだ。いつか歩いてみたいが、今はまったりと色んなことに思いをはせていた。



◆金峯神社、夕日

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金峯神社にて手を合わせる。


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18:19 ちょっと突き出した丘があり、そこから山々を見ることができる。ちょうど陽が沈む時間だった。

何枚か撮影をして自転車に戻る。ここから下って、また下の方の桜を見るつもり。夕方になれば観光客も帰ってしまうことだろう。


- 2.5 吉野3:花矢倉展望台(夜)


吉野のシメは「花矢倉展望台」とした。ここでタイムラプスをやってみよう。


◆日の入り

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着いた時にはちょうど日の入りだった。


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慌ててカメラをセットしたので構図も何も考えていない。


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\○/

日の光がバンザイしているようにみえる。



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日が沈むのはとても早い。あっという間だ。


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山陰に沈んだ。



◆見下ろす

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花矢倉展望台は上千本というゾーンにある(たぶん)。上千本は4/16に満開予定と聞いていたからもうちょっと咲いているものかと思っていたが全くの蕾状態。

しかしここから見下ろす下千本、中千本の景色は大変よろしい。


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高価な機材でしっかりした三脚。それっぽい人が大勢いる。あとで分かったことだが、この場所で朝霧に霞む桜を撮影するのがプロおよびハイアマチュアの仕事らしい。なので昼間の桜には目もくれず、歩行者天国の時間が終わってからクルマでここまで来て、三脚を立てて場所取りをしておく。夜は寝て、朝3時、4時から撮影開始。きっと数時間、実質的には数分のためにそれだけの時間を費やす。カメラマンというのは本当に我慢強い生き物だ。

私は旅の途中にちょっと撮影ってレベルなので、装備も知識も忍耐もガチの人に及ばない。まあ、でも迷惑かけないレベルで自分が楽しめればそれでいいやって感じなので気楽ではある。


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夜は桜のライトアップもしているようだ。

ここで映像撮影のプロ(フリーランス)の方と話をすることができた。

・facebook
https://www.facebook.com/spotjapan.festival/

私の知らない世界の話をたくさん聞かせてもらった。オーロラのタイムラプス映像とか、ドローン撮影した映像とか・・・美しい映像をスマホで見せてもらった。やはりプロは違う・・・。東京からバイクで来られたらしいが、今日もドローンを持ってきているそうだ。カメラもフルサイズ。機材にもお金がかかるのだろう。

楽しい時間を過ごせました。ありがとうございました。またどこかでお会い出来たらと思います。


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その後、タイムラプスに挑戦してみた。出先でのタイムラプスはこれで2回目なので、予備知識は学習済みだったが色んなことが頭から消えていた。SSを30secでやってしまった。SSが長ければ余程の広角レンズを使わなければ星が点にならない。地球は自転しているのだ。


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映像のプロに「星は15secですよ」って教わった。「タイムラプスはトライアンドエラーですから」とも。

タイムラプスは撮影に時間がかかる作業だから事前の準備がとても重要。天候や不規則な人工光(クルマのライト)などに対する運もちょっと必要。私は仕事じゃないからとりあえず仕掛けてしまった30secで撮影を続けたが、これが仕事だったら緊張感半端ないだろうなぁ。カメラサブ機を何台も準備してしまいそうだ(笑


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映像のプロは21時頃には就寝された。テント泊。ああいうのもいいなぁ。テント欲しくなってきた。

22時くらいまでタイムラプスを頑張って下山した。寒くて我慢できなかった。それに吉野に宿を取っていないので(この時期取れるはずもない)、また大和高田のネットカフェに戻らなければならない。飛鳥駅に荷物も置いてあるし・・・。

山を下りながらライトアップされている桜を撮影。下りの道はすごかった。ここは自転車で上るのはキツイぞ。


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月も出ていた。


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地元の若い男女がバイクで走っていた。


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ということで、吉野の桜でした。

今日の吉野はあくまで”下見”。4/14も吉野の桜を見ることにしていた。でも、昼間の桜はもういいや。人が多くて嫌になった。夕方に吉野に来るようにしよう。


- 2.4 飛鳥駅(荷物受取)


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峠を越えて飛鳥駅。0:06の着。コインロッカーから荷物を取り出して自転車にセットしたら駅の電気が消えた。そのタイミングの良さに驚いた。

この日は流石に疲れてお風呂には入らずネットカフェに直行した。チェックイン時間が関係ないネットカフェは夜間ライドをする私のような人間には好都合な場所だ。




走行距離:79.22Km

吉野へのクライムはなかなか楽しかった。でも逆ルートだったら死んでいたと思う。一部歩行者天国区間があり人の多さに辟易した。桜の時期に自転車で行くなら夜がいいと思われる。

(つづく)